陸上で魚を養殖する!?

養殖といえば「海などで魚を育て出荷する」という形が今まで一般的でした。しかし今は海だけではなくなりました。海で魚を養殖するのではなく陸上で魚を養殖するという養殖方法があります。なぜわざわざ陸上で魚を養殖するのでしょうか?

メリットとデメリットを見ていきましょう。



メリット

1.多くの魚種を養殖できる

海で行う養殖では養殖できる魚種に制約が生まれる可能性があります。海で行う養殖は海の中に網を設置してその中で養殖を行います。多くの養殖場では養殖の網が海底までで到達していません。そのため海中を遊泳する種類の魚は養殖することができますが、ヒラメなどの主に海底で生活する種類の魚は海上で養殖することは難しくなります。

陸上養殖では養殖する魚種に合わせた形で養殖をすることができるので多くの種類の魚を養殖することができます。

さらに海で養殖できる魚は海に住む海産魚だけです。淡水魚を養殖することは基本的にはできません。

なぜ淡水魚を海で養殖することができないのかというと、海水と淡水の塩分濃度の違いがあるためです。海水を舐めてみるとしょっぱいと思います。淡水には塩分は含まれていないのですが、海水には塩分が約3.3%含まれています。塩分にはナトリウムというものが含まれており、このナトリウムが生物の体では重要な役割を果たしています。

水には濃度の低い方から濃度の高い方に移動するという性質があります。淡水魚の体液は淡水よりも濃ゆく、海産魚の体液は海水よりも薄い。そのため淡水魚は体の中に水が入っていき、海産魚は体から水が出ていきます。

生物が生きていくには体内の塩分濃度を一定にする必要があります。そのため体内に水が入ってくる淡水魚はえらから積極的に塩分を吸収し濃度の薄い尿を大量に出します。反対に海産魚は体内から水が出ていくため海水を飲み込み続け、えらから余計な塩分を排出し体液と同じ濃度の尿を少量排出します。

ざっくりいうとこんな感じで淡水魚と海産魚は淡水と海水で生きていくための仕組みを持っているため、淡水魚が海水で生活しようとしたり海産魚が淡水で生活しようとすると体の機能がうまく機能しなくなり死んでしまいます。

というわけで海で養殖できるのは海産魚だけです。陸上養殖では海水と淡水でそれぞれ分けて養殖することができるため、淡水魚を養殖しながら他のいけすでは海産魚を養殖するなど幅が広がります。

 

2.天気や環境に左右されない

海では海上が荒れたりすることがあります。台風が来た時や風が強い日には波が高くなったりと天候に左右されやすいです。さらに海では赤潮などが発生することがあります。赤潮が発生してしまえば赤潮の原因の毒性のプランクトンによって魚が死んだり、海水の酸素濃度が低下することによって魚が酸欠を起こして死んでしまうということが起きます。最悪の場合、養殖している魚が全滅してしまうということもあります。大きな損失となってしまいます。

しかし、陸上養殖では天候に左右されることなく養殖を行うことができます。陸上養殖場を室内で行えば天候に左右されることもなく、気温も関係なく養殖を行うことができます。さらに赤潮が発生する恐れもないため安定して養殖を行うことができます。

 

3.養殖業者の負担を減らせる

海で養殖するとなると多くの作業をしなくてはいけないため養殖業者にとって負担が大きいです。海の上で作業をしなくてはいけないことがあるため、陸上での作業に比べて大変です。しかし、陸上養殖では陸上で養殖を行うので負担を減らすことにつながります。養殖場に魚の様子を見に行くとしても、海で養殖するよりも陸上で養殖する方が確認に行きやすくなります。

 

4.環境にやさしい

海で養殖を行うと餌などによって海水が汚れてしまいます。大量の魚を一か所で養殖するため排泄物によっても汚染されてしまいます。海で養殖を行っている場所の特徴として内湾で潮の流れが穏やかということもあるため、自然浄化が行われにくいです。

陸上養殖では養殖によってでた排水を濾過によってきれいにしてから処分することで環境を汚すことなく養殖を行えるというメリットがあります。



デメリット

1.養殖施設の費用が高い

海上で行う養殖に比べていろいろな設備を設置する必要があるため費用が高くなってしまいます。また施設を運営していくためには電気が必要となり、電気代などのコストが高くなってしまう可能性があります。施設にかかるコストが高いということはそのコストを上回る利益を得る必要があります。

 

2.陸上のどこに養殖場を建てるか

先ほども述べた通りかかるコストを上回る利益がなければ経営を続けていくことはできません。そのためには余計なコストは削減していかなければなりません。陸上養殖場を建てる場所が市場から離れている場合は輸送にかかるコストが高くなるため、できるだけ市場に近い必要があります。

 

3.停電などのトラブルが発生したときの被害が大きくなる

陸上で養殖するためには水温を一定に保ったり、水を循環させる設備を常に稼働させる必要性があります。整備を稼働させるとなればやはり電気は必要不可欠なのもになります。停電などが発生してしまえば電気を必要とする機械は稼働することができなくなります。一定の水温下でしか生きられない魚もいるため被害が大きくなる可能性があります。予備の電源システムなどが必要となりますが、予備電源は長い期間は持ちません。そのため長期間の停電が発生したときにどうするのかの対策を考える必要があります。

 

まとめ

陸上で養殖する「陸上養殖」にはメリットもありますが、解決していかなければならないデメリットもあります。陸上養殖が主流となっていない現在では単価の高い魚の養殖がメインとなっています。クエなどの市場で高額で取引されるような魚を主に養殖して売る。まだ実験段階の部分が大きいので仕方のないことなのですが。

将来的にはもっといろいろな魚を養殖できるようになっていけば、日本の水産業界を生き返らせることができるのかなと思います。

 

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